2019年11月16日土曜日

闘うべき相手は

弁護士は、近年、弁護士同士での競争を激化させている。

その中で、貧乏弁護士は、儲かっている事務所の弁護士たちの陰口を言い、特に、新興系に対する風当たりは強いものがある。

しかしながら、私は、弁護士が闘うべきなのは、弁護士同士ではないと思う。

近年、民事事件は減少傾向にあると言われている。紛争が減ったのか?

違う。弁護士に依頼する費用を支払えない国民がかなり増えてきているのだと考えられる。

事件自体はあるはずだが、平成の間に進んだ格差社会の影響により、弁護士費用を払うことができず、泣き寝入りする国民が大多数になってきているのだ。

だから、一般民事系の法律事務所は経営が苦しいことになっている。

他方で、企業法務系弁護士の平成での躍進は、内部留保もたんまりある企業、すなわち、格差社会の上位層企業が大量のカネを支払うことができたからに他ならない。

そして、このまま格差社会はさらに格差社会になっていくと考えられる(少なくとも現政権のままでは、あるいは、資本主義である限りは)ことからすれば、民事事件の料金を支払うことのできる国民はますます減っていくことになる。

一般民事を取り扱う弁護士が生き残る道としては、格差が少なくなり、弁護士費用を支払うことができるようになることが考えられるが、これは実現不可能であろう。

もっとも、カネのない国民でも利用することのできるサービスは、現在でもあるではないか。

それは、国選や、法テラス等の扶助制度による法律サービスの利用である。

このサービスを拡充することによって、民事事件が実際に依頼される民事事件になる。

しかし、現在の制度の問題点は、弁護士は、この制度で引き受けると、経費との関係で
、むしろ損失ともなるほどに報酬が低いことである。

その上で、弁護士が十分に食っていけるようになるには、この公的扶助制度による法的サービスの報酬を引き上げるほかないと考える。

これは、政治の世界である。

さらに、日弁連や弁護士会により、この公的扶助制度を広く国民に認知してもらうという政策をとることによって、しっかりとした報酬をもらうことのできる事件を、格差社会の中でも維持し続けることができるのではないかと考える。



さて、近年、弁護士は、弁護士同士でつぶし合っているように思われる。

特に、弁護士会による懲戒権の恣意的な行使によって、成功している事務所の足を引っ張ることばかりに熱心になっている事例がまま見られる。(特に東弁)

そうではないであろう。

そんなガス抜きによっては、食えない弁護士を救うことはできない。(できたとしても一時の感情的な救済に過ぎない。)


我々弁護士が闘うべきは相手は同じ弁護士ではない。

弁護士は、一丸となって、まずは、公的扶助制度利用による報酬の引き上げを実現することが先決であろう。

この目標は、弁護士全員にとって良いことであって、一枚岩になって臨むことができるであろう。

2019年11月9日土曜日

法曹業界は権威主義

前々から思っていたのですが、法曹業界は権威主義です。

法曹の大半は(若い人も含む)とにかく、権威が大好きですから、権威があればどうにかなることが多く、他方で、

権威がないと正しくてもどうにもなりません。

裁判所も、権威ある学者の論文しかとりあってくれないことが多く、本当に困難な問題に直面したとき、誰も自分の頭では考えようとしません。


したがって、弁護士は、とにかく権威を身につけようと、権威ある法律事務所に行き、権威あるアメリカのロースクールに行って、自らの権威を高め、価値を高めます。

しかしながら、権威に果たして何の意味があるのか、私にはわかりません。

良い大学を出て、良い法律事務所を出ていれば、その人が良い仕事をするのか?というのはよくわかりません。

弁護士の仕事の良いところであって悪いところでもあるのですが、弁護士がどうような良い仕事をして、反対に悪い仕事をしたのかというのが外部から客観的に判断することが困難という側面があります。

そのため、外部からの評価方法として、どのような過去を持っているのかという権威によってその人の力量を図らざるを得ない、ということになるのでしょう。

料理や絵画のように、外部から客観的に見ることができるものであれば、権威ではなく真の実力による評価がなされるだろうに。。。

この点、第三者委員会の報告書は、広く大衆に公開されているので、その弁護士や事務所の能力を見ることのできる良い材料になります。

私が中でも素晴らしいなと思ったのは、中村直人先生の報告書でした。

あれは、もはや報告書というよりも教科書でした。(笑)

中村直人先生が長年にわたって高い評価を得ている理由というのが、あの報告書を見て、はっきりとわかりました。


長くなりましたが、何を言いたいのか、というと、

何となくそれっぽい権威や肩書に踊らされるな!実を見ろ!

ということでした。

2019年10月27日日曜日

デューディリジェンスでもAI台頭か。

少し前、NOTがデューディリジェンスのリーガルテック企業と業務提携をしたとの報道がありましたね。

契約書チェックなどにおいては、既にAI-CONなどのリーガルテック企業(事務所)が結構使われ始めていて、企業法務の今後のニーズは変化していくでしょう。

私個人としては、デューディリジェンスは、なかなかAIによる手伝いというのが難しいものがあるのかなと思っていたのですが、できるという見込なのでしょうか。

それよりも驚いたのが、4大法律事務所のうちの一つがデューディリジェンスのAI化を支援したというところです。

このブログでは、散々書いていますが、企業法務の事務所の収益は、膨大な時間がかかることにより成り立っています(タイムチャージ式で大量請求)。

そのため、正直、4大は、AI化にあまり乗り気ではないのかなぁとも思っていました。

しかしながら、NOTは、この波を利用する側に回ることにしたようです。

さすが、一流の事務所です。

時代についていけない事務所は、今ある波を既得権をもって排除しようとするのですが、しっかりと波を利用する側に回る判断をNOTがしてくれたので、尊敬します。

これは、デューディリジェンスのサービスをAIで提供する側に回って、その収益を得ようとしている行為であって、経営戦略としては良いでしょう。

なぜなら、このAIが発展した場合、従来通り高い料金でデューディリジェンスもやります!と言っても、頼む企業があまりいなくなってしまう恐れが高いからです。

それならば、多少薄利になっても、AIでさばいて、難しい部分は専門家がやる、という方法により、より件数多くこなして市場を独占していく、という方向性を選ぶべきでしょう。


さて、色々書きましたが、従来型の企業法務のやり方では、なかなか生き残れない企業法務系事務所が増えていくのは間違いないと思われます。

特に、人手が必要であって作業が自動化されるとすると、それこそ企業内弁護士での処理が大半になってくるわけで、外部に委託するとしても、この論点について、など、難しい割にあまりチャージができないものが増えてくると思われます。


上に書いたように、市場の独占というのがこの先さらに進んでいき、二極化の流れは加速すると思います。

小規模事務所の経営は、ますます難しいものとなってくるでしょう。

それと、5大の採用傾向もしかしたら変化してくるのかもしれません。

2019年10月19日土曜日

古き良き時代

弁護士業界、近年は漠然とした不安感というものが全体的に広がっていますね。

そして、弁護士業界には、古き良き時代というのがあったのは、事実です。

昔は、努力をしなくてもお客さんが来ました。
昔は、適当な仕事をしていても弁護士として堂々とやっていけました。
昔は、皆助け合ってみんなうまい飯を食えていました。

これが昔の弁護士の既得権です。うらやましいですね。そんな時代もあったのです。

しかしながら、現在、ベテランで活躍されている弁護士というのは、やはり、確固たる実力のある人で、適当な仕事をする人は淘汰される時代になってしまいました。

また、営業をしないとお客さんが獲得できない時代になってしまいました。

すなわち、上に書いた既得権はすでにかなり崩壊しつつあります。

弁護士の大増員により、まっとうに、努力や仕事をしないと弁護士と言えど食べれない時代になってしまったのです。

しかしながら、まっとうに仕事をしないと食えていけないというのは、普通のことです。

弁護士業界も普通の業界になりつつあるということです。

ただ、一つ言いたいのは、

普通に、まっとうに努力をしていればまだまだ稼げる仕事である、(この努力というのは、書面作成等はもちろん、営業、集客も含みますよ。)ということです。

けど、一つ注意していただきたいことは、この業界は、新興系に対して風当りが強いのは確実です。

若者が、若者だけで頑張って稼ぐと、懲戒権を行使して必要以上の懲戒をするということが行われます。(特に某弁護士会は顕著)

結局、この記事で言いたかったことは一つ。

まっとうに、別の業界同様の努力をしてください!!

2019年10月10日木曜日

東弁の赤字問題

東京弁護士会は、3年連続で赤字となっているようですね。

しかも、1億以上の赤字です。

だからなのかな?

近年、東弁は続々と新興系(特に儲かっているところ)を懲戒していますね。

しかもその内容は、実際の懲戒事由に比べてやたらと重かったり。。。

経営センスを磨いて、懲戒ではなく、正々堂々と頑張れ!!

ということですが、近年、新規の会員も東弁より一弁の方が多くなっているみたいですね。

魅力的な弁護士会とは何なのか?

既得権益保護に全力なことなのか?ということは、一度立ち止まって考え、若手、新規の弁護士にとっても魅力ある弁護士会にしなければならないだろう。


でなければ、今後も新規の会員が減っていってしまうであろう。

正直に言って、若手が何を求めているか、というと、自由であると思われる。


就職とは関係がない話になってしまったが、ふと思ったので記した。

2019年10月6日日曜日

弁護士のインハウスへの就職

近年、弁護士がインハウスに就職、あるいは転職するケースが増えている。

そこで、インハウスへの就職はどうなんだ?ということについて考えてみたい。

まず、以前の記事でも書いた通り、安定感というものは、普通の法律事務所よりもあるのが一般的である。

しかしながら、これは、あくまで大企業に限った話であって、ベンチャー企業のインハウスになるのであれば、法律事務所同様リスクが伴う。

ということを前提に、どういう人がインハウスに行く傾向があるのか、少し書いてみたい。

まず、印象的に、新人弁護士がいきなりインハウスに行くという場合には、圧倒的に、保守的思考であり、ライフワークを求める人、怖がりな人が多い。

「ビジネスにより近いところで仕事がしたい」というのは、インハウス志望がしばしば述べるありきたりのきれいな理由であるが、実際は、法律事務所という不安定な組織にビビっていて、何となく大手の企業で守られて生きていたいという人が多い印象である。

もちろん、リスクをより少なくする人生設計というのは、合理的であるが、ビジネスにより、、、とかいうきれいごとは言わないでほしいものである。

先に述べた通り、保守的でビビりな人が多いので、実際は、ビジネス感覚など全くもってないタイプの人がほとんどである(ビジネスとはリスクを伴うものであり、保守的な人は公務員的な思考の人が多いので、正直ビジネス向きではない。)。

また、法律事務所ならとっとと到達する報酬額を時間をかけてじりじり到達しているにすぎず、まともな法律事務所の方が儲かるのは間違いない。


さて、ここまでインハウスに入る人をやや悪く書いてしまったが、そうではないパターンの人ももちろんいる。

特に、もともと非常に専門的分野を取り扱っていた法律事務所出身の人間が、インハウスに入って、労働時間はぐんと減る一方で、それなりの給与を貰えるというポジションでの転職は成功例であると思われる。

また、意外と、元4大法律事務所の人間などは、ベンチャー企業のインハウスになることがままある。これは、真に社会に価値のあるものを届けたい、自分のやりたいことをやりたいという非常に前向きな転職であり、極めて尊敬に値する。

他方で、法律事務所では食っていけなくなった弁護士が、薄給でインハウスになるということもあり、これは見ていて辛いところもあるが、もはや仕方がない。

また、保守的な人はインハウスに行く傾向が強く、また、えてして保守的な人は多様性を認めず、法律事務所やベンチャーを批判したりバカにしたりするが、まともな法律事務所の方が普通に稼げるで気にしないでよい。(でかい企業の看板があることで態度がでかくなっているだけ)


結局、何が言いたいかというと、「インハウスに魅力があるのはそうだが、法律事務所の魅力もまだまだある」ということである。

2019年10月3日木曜日

人依存型組織の危険性

多くの法律事務所は、小規模であり、人、特にネームパートナーに依存している。

「小規模な事務所でこじんまりやっていれば潰れることはないし、安全だ。」
と考えている人も多い。

しかしながら、これは大きな過ちであると言える。

小規模商店は依存している「人」がいなくなったとたん、たちまち潰れる。

また、一人一人の構成人への依存が大きくなるため、おちおち休むこともしにくくなる。

つまり、
小規模事務所は、「安泰ではなく、リスクをとってハイリターンを狙っている。」
そう考えたほうが正しい。

破産をしてしまったり、預り金に手を出す弁護士は、間違いなく小規模事務所であり、大規模事務所の人間にそんなことをするやつはいない。
食えなくなるのはいつも小規模事務所の人間である。

せっかくこのブログを見ている読者が就活をするのであれば、この小規模のリスクというものをしっかりと考えて欲しい。

腰を据えて小規模のところでやるんだ!という考えの方もいるが、これは、

多くの人とごちゃごちゃと接しなくてよいというメリットに引っ張られているのではないかと思う。

人は、結局色々な人と関わり、気を使うということがストレスになる生き物であり、少人数でぬくぬくしていた方が居心地がいいに決まっている。

また、老舗の大型事務所も、結局は一人一人のパートナーに依存している傾向が大きく、事務所というよりも、どうしても人に依存しているという傾向が大きく、その人がいなくなったとたん、大規模事務所であっても相当程度仕事が減るということは十分考えられる。


インハウスはある意味、組織によって運営されていて、人依存のレベルとしては低く、安泰な組織であると言える。

では、インハウスへの就職はどうなのか?
ということについては、次回の記事で書きたいと思う。


とにかく、
本記事で申し上げたかったことは、小規模の事務所には少なくとも大規模よりもリスクが大きいということである。